キルギス族はイスラム教徒ですが、ソ連邦時代はマルクス-レーニン主義の宗教否定・科学的無神論のもと、
宗教色合いは制限されていました。
ソ連邦の崩壊、独立とともにキルギスは経済的に停滞する状況になりましたが、
宗教への制限がなくなり、人々の世界観は変貌をみせています。
次は現在の人々の意識の一例を示す発言の一例です。
『(イスラム教への思い入れはないけど)神がいないなんて(自分の意識として)言うことはできないなあ』
(四十年代キルギス人男性)
『以前は神はいないと信じていた。今も礼拝に行くことはないけど、神はいると思う』
(ビシュケク在住五十年代ロシア人女性)
キルギスは本来はイスラム教地域でありますが、前に触れましたように歴史的経緯もありまして、
イスラム教の影響が通常の日本人の仏教に対する意識のように宗教儀式やスタイル等を生活習慣として用いることがある、というように弱まっていることに加え、
ソ連邦崩壊によりロシアからの経済的影響が弱まり、有力な産業になりうる最有力と位置づけている観光に力を注いでいる農業、牧畜国キルギスは、経済的、国家体制、独立時に飛び込むことになった新しい生活に試行錯誤の状態であります。
そのような状況の中、キルギスではイスラム教、キリスト教などの外国の宣教団体が盛んに活動しています。
ここでは、とあるイスラム教組織のビシュケクでの活動について、触れたいと思います。
その組織はトルコのイスタンブールを本拠を置く世界各国で活動しているイスラム教団体でキルギスで子供たちに無料で教室、
食事および休憩、宿泊場所を提供し、そこでコーランなどの講義を行っています。
イスラム教徒であるキルギス人の親が子供をそこで勉強させたいと思う理由は次のような場合がよくあるようです。
1.貧しいキルギス人家庭は学校まで遠い郊外に住んでいるが、そのイスラム指導センターは町の中心にある。
2.忙しくて子供の世話が十分にできないが、そのセンターはイスラム教の指導とともに子供の世話をしている、またそこで他の子供たちと遊ぶこともできる。
3.センターでは当然、アルコール、喫煙およびドラッグを禁止しており、また社会倫理的に正しいことを学び、
いかがわしいことを身につける心配がないので、安心して子供を預けることができる。
ソ連邦時代には社会主義の下、福祉医療保障国であり、経済的利益、教育水準上昇などの結果を副次的に被りました。
社会主義ソビエト連邦からの独立後、発展途上の経済の中、以前のように子供の面倒を十分にする余裕がなくなった現状での、
キルギスでのデイケア(この例では託児所)の一例とは言えないでしょうか。