草茂る季節へ

人の歩む道

キルギスタン 夏


最近は草を食む家畜のように野山を
渡り歩いている。

ただ、それを統制するものがあるわけでもなく、
糸の切れた凧のようにという表現の方が、
適切なのかもしれない。

その凧も踏み均された土の上をなぞるか、
目印を失わない程度に
横道に逸れて不器用に舞い上がり、
そして、すぐ緩やかに舞い降りる。


今日は曇り。
適当なところでバスを降りる。


虫の音の響く草山を上ると
鳥たちが黄色の花をすり抜けるように、
僕の足元の周りを旋回し始めた。

後ろを振り返ると雲に覆われた町の姿が、
茸を採集する少年が通り過ぎ、
方向を転ずると白や黒の山羊や羊の群れが
草を食んでいた。


天気がよければ、どんなに素敵な景色であろうか。

このままここで丘のてっぺんに腰かけてみるというのは
いかがなものであろうか。

残り少なくなった貯金をはたいて、山羊や羊を買おう。
家作りは、知り合いに頼めばいい。
喜んで手伝ってくれるだろう。
たとえ土で固められた小屋しか残らないにしても、
家畜とともに生きながらえることであろう。
雲間からさす薄日が照らすこの頂上に座り、
遠くを見つめながら。

冬はどこに逃げようか。

ビシュケク アサンバイ