最近は草を食む家畜のように野山を
渡り歩いている。
ただ、それを統制するものがあるわけでもなく、
糸の切れた凧のようにという表現の方が、
適切なのかもしれない。
その凧も踏み均された土の上をなぞるか、
目印を失わない程度に
横道に逸れて不器用に舞い上がり、
そして、すぐ緩やかに舞い降りる。
今日は曇り。
適当なところでバスを降りる。
虫の音の響く草山を上ると
鳥たちが黄色の花をすり抜けるように、
僕の足元の周りを旋回し始めた。
後ろを振り返ると雲に覆われた町の姿が、
茸を採集する少年が通り過ぎ、
方向を転ずると白や黒の山羊や羊の群れが
草を食んでいた。
天気がよければ、どんなに素敵な景色であろうか。
このままここで丘のてっぺんに腰かけてみるというのは
いかがなものであろうか。
残り少なくなった貯金をはたいて、山羊や羊を買おう。
家作りは、知り合いに頼めばいい。
喜んで手伝ってくれるだろう。
たとえ土で固められた小屋しか残らないにしても、
家畜とともに生きながらえることであろう。
雲間からさす薄日が照らすこの頂上に座り、
遠くを見つめながら。
冬はどこに逃げようか。